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【電通過労死問題】石井直社長の経歴や鬼十則から垣間見れるブラックな社風

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2015年12月に飛び降り自殺をした電通新入社員・高橋まつりさん(享年24)の労災認定が、2016年9月末に下りた問題で、石井直社長の辞任が発表されました。

“ブラック企業”が社会問題の装いを呈してきて久しいですが、未だにこうした問題は後を絶ちません。世間で言われていることと実際の社内の環境は180度違いますし、そしてそこで働く以上はそれに準じるしか選択肢がないなど、死に至らずとも行き過ぎた過労やストレスの問題は現代社会に深く根を下ろしています。

中でも電通の厳しい労働環境は有名で、最近になってブラックだと騒がれだした件に「何を今さら」と冷ややかな目線を送る人も少なくありません。

一体、電通社員はどんな社風の中で働いているのか……。今回、辞任を発表した石井直社長の経歴や環境改善の改革の経緯から、電通内部の社風が垣間見れる気がします。

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石井直社長の経歴

東京都立三田高等学校、上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業後、1973年に電通に入社し、30年後の2002年に常務執行役員国際本部副本部長、2006年に常務取締役アカウント・プランニング統括本部長、2009年に取締役専務執行役員を経て、2011年に営業畑から初の第12代代表取締役社長に就任しました。

社長就任後は、電通オーストラリアが営業を開始し、オセアニア地域への事業拡大を図りました。またイギリスのデジタル・マーケティング会社を買収、スポーツイベント運営会社を子会社化するなどの実績を残しています。

営業畑からの初の社長就任ということで、“「鬼十則」叩きこまれて働いてきた根っからのブラック社員だった”と思われます。実際、辞任が決まってからの会見での記者の「「鬼十則」に疑問を持ったことはないか」という質問に対し、「ありません」と答えています。

ところで、今回の電通の過労死問題では「鬼十則」が度々注目されていますが、実は「鬼十則」そのものに長時間労働を是とする記述はありません。

鬼十則と裏十則

「鬼十則」とは、4代社長の故吉田秀雄氏が定めた十箇条で、仕事をする上での心構えを説いた格言集です。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団 | 財団の概要 | 吉田秀雄について | 「鬼十則」 より引用

「鬼」という単語のインパクトが凄すぎて、この「鬼十則」がブラック企業の象徴のように語られることもありまが、よく読んでみると労働のあり方を具体的に語った言葉はありません。問題はその解釈の仕方です。

ところで、とある人がこの「鬼十則」をパロって作った「裏十則」というものをご存知でしょうか?

1)仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
2)仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
3)大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
4)難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
5)取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
6)周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
7)計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
8)自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
9)頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
10)摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

裏十則 | Blog | nozomu.net - 吉田望事務所 - より引用

面白いのは、サラリーマンとしては電通の鬼十則よりも、パロディとして作られた裏十則の方がウンウンと頷けそうなところ。「裏十則」を記事として取り上げ、「『鬼十則』は経営者の原則であって労働者の原則ではない」と書いてるブログもあります。納得。

だが驚くべきことに「鬼十則」をサラリーマンの手本として賞賛・紹介している人が多い。

僕の感想はまったく違う。

「鬼十則は断じてサラリーマンの手本ではない。経営者の手本だ。」 サラリーマンなんて、決められたことを決められた通りにやっていればいい。現に僕は決められたこと以外、何一つやらない。それでも売上は伸びる。

電通「鬼十則」で過労死…いま「裏十則」が注目される2つの理由! より引用

このギャップからは、石井直社長は経営者であり労働者ではなかったということ。そして電通は、社員全員に「経営者たれ」と道を示す企業であるということが分かります。

今回、電通では高橋まつりさんの死を受けて労働環境にメスが入り、石井直社長は業務量の削減と分散化、月間時間外勤務の上限を下げて22時以降の業務を禁止し、全館を消灯するなどの対策を勧めていくと話ました。労働者の立場に立って環境を見直すことを始めたのです。

電通の社員は労働環境が改善されて働きやすくなって喜んでいるかと思いきや、この改革が「鬼十則」に反するとして不満を漏らす社員もいるんだそうです。

この話は、石井直社長の経歴と合わせて、電通のサラリーマンがどんな社風のもとで働いているのかが垣間見れる気がします。労働者の立場をとる人と、経営者たらんとする人が混在している。

そして、そこに対立が起これば「鬼十則」を守っている(と思っている)経営者側が、守れていない労働者側を攻撃する材料になってしまっているのではないか。つまり、「鬼十則」が厳しい労働環境を是とする盾になっているのではないかということです。

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辞任のタイミングと飽くまでクリーンでいたい企業

石井直社長は、マスメディアに向けて今後の労働環境の改革を積極的に進めていくと説明しました。

 当社は「人が財産」「社員の働きがすべて」の企業で、社員一人一人が成長の原動力だ。しかしそれが、ともすれば「業務の品質」を高めるために時間を際限なく費やす、それを「是」とする風土となっていた。

 しかし、人の時間は無限ではない。この当たり前の事実を刻み、働き方を見直していく。経営における優先順位を見直し、一人一人が健康に、多様な働き方を通じて自己の成長を図れることが最重要だと、強く認識している。そうした労働環境を実現していくことをお約束する。

 すでに11月に「労働環境改革本部」を設け、業務量の適正化、組織マネジメントや人事制度の改革など、過重労働の根絶に向けた取り組みを推進している。この進捗に関しては、外部によるモニタリングの導入も検討している。

 社会の皆様に認めていただけるよう、不退転の決意で進めていく。

【電通会見詳報(1)】長時間労働「『是』とする風土あった」…石井直社長が弁明(1/2ページ) - 産経ニュース より引用

そんな中、「当局から指導を受けたにも拘らず抜本的な改革が出来なかったため、全責任をとって」と、石井直社長が辞任を発表。今後の改革は新社長に委任されることになります。

今回の石井直社長の辞任は、改革に向けて意欲を見せた態度とは180度違っていることが気になります。やはりトカゲの尻尾切りの悪習である感は否めません。「高橋まつりさんの死を繰り返さないために、深く反省して全力で環境を見直していく」というよりは、「とりあえずクリーンなイメージを保ちたいという企業側の経営面でのパフォーマンスを優先させた」ということなのではないかと考えてしまいました。

こうした話が出るたびに、「全責任をとるならしっかり改革を進めるべき」と思うのですが、実際この辞任に石井直社長の意志が関わっているかは甚だ疑問。「ブラックな労働環境」の悪習を正すために、「トカゲの尻尾切り」の悪習を重ねていくというのも何だか皮肉な話です。

一刻も早く、高橋まつりさんの死が報われる日が来ることを願っています。

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