魔除けなどの宗教的な要素が強い海外のお祭りであることから、キリスト教のお祭りだと勘違いされがちなハロウィン。

ですが、実はキリスト教とハロウィンは何の関係もありません。むしろ祝うのはタブーとされている節も……。

今回は、意外と知られていないハロウィンとキリスト教の関係について掘り下げていきます。

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ハロウィンはキリスト教のイベントではなかった!

現代のキリスト教は、ハロウィンを「無関係」として公式に否定しています。

しかし、歴史的には、全く関わりがなかったわけではありませんでした。

ハロウィンの起源は、古代ケルト人の祭り「サウィン祭」だと考えられています。

紀元前から続いてきた「サウィン祭」は、ローマ帝国の支配がヨーロッパ全土に及ぶ1世紀頃から、徐々にローマ・カトリックの影響を受け始めます。

その後、その祭りは様々な祭事や人々の暮らしの影響を受け、歴史的には宗教的な教義よりも、民衆と深い繋がりを保ちながら「ハロウィン」として現代に至っています。

ハロウィンの語源はキリスト教から

ハロウィンが「Halloween」と呼ばれるようになった理由には諸説ありますが、一番有力とされる説では、キリスト教が深くかかわっていると考えられています。

もともと「サウィン祭」は、自然崇拝の多神教を信仰していたケルト人にとって、とても重要なお祭りでした。

どれくらい重要かというと、“大晦日と正月とお盆が一緒になっているお祭り”と言えば分かりやすいかと思います。

ローマ・カトリックは、ケルト人たちをキリスト教へ改宗するために、「サウィン祭」をカトリックの重要な祝日である「諸聖人の日(All Hallow’s)」の前夜祭と定めてしまいます。

その日は「hallow’s evening(聖なるものの前夜)」と呼ばれ、その言葉が縮まって、現代の「Halloween」になったと言われています。

「諸聖人の日」の前夜祭になったハロウィン

諸聖人の日
カトリックがケルトの祭りに積極的に関わってきたのは、7~8世紀頃だと言われています。

カトリックの重要な祭日である「諸聖人の日」は7世紀初頭に導入され、当時は5月13日に祝われていました。

それを11月1日に持ってきたのは、8世紀に入ってから。その理由として、主に2つの説が語られています。

「異教の祭りを取り込もうとした説」

ひとつは、異教のケルトの祭りをカトリックに取り込もうとした説。

この説では、ケルトの収穫祭は民衆と深く結びついていたため、無理に潰そうとすると大きな批判となりかねないと判断され、前夜祭「Hallow’s eve」として形が残されたとしています。

「異教の祭りを潰すため説」

もうひとつは、カトリックの重要な祝い事を隣に持ってくることで、ケルトの祭りそのものを潰してしまおうとした説。

当時のキリスト教はある意味では強制に近い力を持っていたと考えられるため、潰してしまおうとしたのであれば不可能ではなかったかもしれません。

しかし、結果を見れば、そんな宗教的な目論見など露と知らず。

ハロウィンは、宗教とは全く関係のないところで俗世に根深く結びつき、アイルランドからアメリカに渡って、民衆のイベントとして世界に花を開くことになりました。

キリスト教的な要素は民衆の影響によるもの

この様に、キリスト教は、ハロウィンと全くの無関係というワケではありません。

しかし、その影響はどちらかというと民衆の側によるもので、カトリックの宗教的な目論見が功を奏しているというわけではなさそうです。

つまり、「民衆にキリスト教が浸透していくにつれて、ハロウィンにもキリスト教的な要素(悪魔やジャック・オ・ランタンなど)が取り入れられ始めた」と考える方が自然でしょう。

  • ハロウィンのカボチャ「ジャック・オ・ランタン」の伝承
  • ジャック・オ・ランタンは日本で言うところの鬼火・人魂を意味します。その元となる伝承には「地獄と悪魔」が登場しますが、ケルト神話に代表されるケルトの自然信仰には、「天国と地獄」という概念が存在しません。そのため、カボチャのランタンの世界観はキリスト教の影響が強いと考えられます。

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キリスト教ではハロウィンはタブー?

肝心のキリスト教会はというと、ハロウィンを「教義とは全く関わりのない俗世のイベント」として無視しています。それどころか、教派によっては完全にタブー視している傾向も見受けられます。

否定の程度は教派によってまちまちではあるものの、公式に推奨・奨励している教会はありません。

ハロウィンの行事への参加に寛容なキリスト教派もありますが、否定的な態度は一致しています。

キリスト教がハロウィンに無関心な理由

ハロウィンはもともと死者の霊、先祖の霊が帰ってくる日とされています。

その日は悪霊も一緒に現世に現れるため、魔除けの仮装をして悪霊に施しをすることで帰ってもらう、というのがハロウィンの一連の儀式。

しかし、キリスト教では、世界を司っているのは神であり、死者を復活させるのもまた神の御業によるものと考えます。死者の霊魂に現世に帰る力はありません。

さらに神が復活させるのは聖なる魂であり、先祖の霊が帰ってくるわけではありません。ましてや悪魔や悪霊などは神に見放された魂であり、聖なる魂と一緒に帰ってくるはずがない、というのがキリスト教義とハロウィンの大きな矛盾となっています。

また、「子供たちに悪魔などの危険なもの(キリスト教的に)を楽しみとして植え付ける危険な祭り」として批判を投げかける声もあり、一部のキリスト教学校では、「ハロウィンには参加しないように」と通達を出すこともしばしば。

教派による態度の違い

それでは、教派ごとにハロウィンへの態度がどのように違っているのか、カトリック、プロテスタント、 東方正教会の世界三大キリスト教派を例に簡単に見ていきましょう。

プロテスタント諸派

プロテスタントとは“抗議”という意味を持ち、「プロテスタント」という教派は存在しません。

腐敗したカトリックへの抗議という形で生まれ、プロテスタントの中でも大小様々なキリスト教派が多岐に渡って混在しています。

そのため、「諸派」という括られ方をすることが多いです。

教皇絶対のカトリックから分離した経緯からか、プロテスタントには聖人を崇める概念そのものが存在しません。そのため、カトリックの「諸聖人の日」を祝わないので、ハロウィンとは全く関わりがないと言って差し支えないでしょう。

忌避すべき悪魔を楽しいものとして催されるハロウィンには、「危険性」を訴える立場をとり、信仰生活に悪影響を及ぼさないように呼び掛けてはいるものの、ハロウィンの諸行事に参加すること自体を否定はしないケースが多いようです。

カトリック

ハロウィンは、現代でもカトリックの「諸聖人の日」と深く関わっていると思われがちですが、現代のハロウィンと「諸聖人の日」は全く関連していません。

プロテスタントに比べて厳正なイメージを持たれることが多いカトリックですが、イメージとは裏腹に、基本的に他の宗教を否定・攻撃することはない寛容な教派です。

カトリック内部でもハロウィンに対する見解は様々なようで、中にはハロウィンに対して厳しい批判を投げかけるケースや、参加しないように呼び掛ける教会もあり、いずれもあまり奨励的ではありません。

公式にはプロテスタント諸派と同じ様に「俗世のイベント」として、否定も肯定もしない立場をとっています。

東方正教会

ロシアの方に浸透している東方正教会は、ハロウィンを「死のカルト」とし、完全に批判しています。

ハロウィンを教会の教えに沿った形に整える努力がなされることもあり、「俗世のイベント」として切り離して考える西方教会とは、やや方針を異にしています。

カトリックやプロテスタントなどの西方の方は、批判しながらも比較的肝要な態度を示していますが、特にロシア正教会はかなり厳しめ。

ロシアの教育省は、「ハロウィンは子ども達の壊れやすい心には有害である」との見解を示し、毎年ハロウィンの時期になると、国を挙げてあの手この手でハロウィンを阻止しようとしています。

そのため、ロシア本国にはハロウィンは全く浸透していません。

グローバル化の影響で国民の認知度は上がってきているものの、2013年までのロシアの世論調査の結果では、「ハロウィンを祝う人は全国民の5%ほど」という統計も出ています。

ハロウィンを広めたのはアメリカの商業主義

ハロウィンを世界中に広げ、現在の形にしたのはアメリカが起こした商業主義の波でした。

日本のハロウィンも、その流れに乗ってやってきて、年々盛り上りを増してきています。

“魔除け”という古代ケルトの宗教的な概念を現代まで継承してはいるものの、教義や儀式としてのハロウィンは既に崩壊していると言っても良いでしょう。

「ハロウィンは子供が仮装するもの」として、現代の大人が騒ぐハロウィンパーティーに対して批判的な意見を目にすることもありますが、ハロウィンはそうした既成概念を乗り越え続けて、2500年以上の長い歴史を築いてきました。

現代においては経済効果、民主主義、SNSという最高の追い風に乗りきって、これからも形を変えながら大きな盛り上がりを見せていくことが予想されます。