読んだ人は自分の中に眠るダークサイドを当たり前のように掘り起こされ、嫌悪感を剥き出しにされることも多い「闇金ウシジマくん」。

多くの人が目を背けているリアルをエンターテイメントにしてしまった張本人もやっぱりブッ飛んでいて、かなり特殊な感性の持ち主のようです。一体何を思って書いているのか……。

数あるインタビュー記事の、取材のエピソードが怖すぎます。そしてそれを冷静に観察している真鍋さんの感性もすごい。

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真鍋昌平の経歴とプロフィール

真鍋昌平
神奈川県茅ヶ崎市出身

漫画家を目指すきっかけになったのは「ドラえもん」。漫画家を目指しながらグラフィックデザイナーのアルバイトをしていたことも。2004年に連載を開始した「闇金ウシジマくん」が大ヒットを飛ばし、一躍人気作家になりました。

漫画作品の経歴

1993年に渋谷パルコのフリーペーパー『GOMES』主催の漫画グランプリに出した「ハトくん」が※しりあがり寿賞を受賞しデビュー。
※しりあがり寿:時事ネタ、サラリーマンネタ、家庭ネタ、果ては哲学まで、幅広いテーマを扱うギャグ漫画家です。「ギャグによって文学の域に達した」として高く評価されています。

1998年に「憂鬱滑り台」がアフタヌーン四季賞夏のコンテストの四季大賞を受賞し再デビュー。

2000年より『月刊アフタヌーン』に「スマグラー」「THE END」を連載。
sumagurathe-end

2004年より『ビッグコミックスピリッツ』で「闇金ウシジマくん」を連載中。
闇金ウシジマくん 漫画表紙

闇金ウシジマくんのリアリティの秘密

社会の底辺のリアルな闇金事情を淡々と描く「闇金ウシジマくん」。その世界観は、Twitterで読者に「お前なんで俺のことを漫画に描いているんだ」と怒られることもあるほど。

闇金を実際に取材をしているのかどうか、気になる人も多いと思います。結論から言うと、取材は実際にしています。それも“一応ちゃんと”というレベルではなく、毎回もの凄い量の取材をこなしています。

単行本には取材協力者の名前がズラッと掲載されています。

「闇金ウシジマくん」のリアリティは、膨大な取材とそれを冷静に見つめる観察眼に支えられているのです。

インタビューが怖すぎる

真鍋さんは、繁華街に出かけて街を行く人を観察し、そこで漫画のネームを書き切ってしまうこともあるのだとか。

取材は「闇金ウシジマくん」の屋台骨。時折、インタビューで取材の時の様々なエピソードが語られます。

真鍋:ホストクラブは3店舗で70人くらいの人に話を聞きました。全て同じホストの方のエピソードでは無く色々と話は混ぜていますけど、「全然お客がつかなくて自分の母親を呼んだ」というのと、「母親が自殺した話を営業トークに使う」というのは実話です。とても印象に残っていて、漫画のキャラクターに使わせてもらいました。

ガジェット通信 より引用

リアルなものでは、こんな空恐ろしいエピソードも。

真鍋:そういえば、整形したばっかりというAV嬢もいましたよ。顔が飽きられたから出会いカフェで売春して、そのお金で整形手術して顔を変えてまたAVに復帰するって言ってる人。なんか、思考回路がちょっと普通じゃないんですよ。ロボットみたいな感じで。

―背筋が寒くなる話ですね。

真鍋:会話してるときも、「二重まぶたが戻らないように」って、ずーっと目を剥きながら話してて、まばたきも一切しないから、「……目、乾かないのかな」って、そればっかり心配で(笑)。小顔の手術で頬の内側も削ってるから、しゃべり方も「ほうはんへすお(そうなんですよ)」(笑)。あれはすごかったですね。なんか飲みますか?って聞いたら、「ひげひのないものへ(刺激のないもので)」って(笑)。

エキサイトニュース より引用

これが漫画でもゲームでもない、現実の話だっていうんですから恐ろしいです。

こうしてインタビュー記事を読んでいると、なんというか、人の世のくすんだ部分、“人を狂わせてしまう何か”をもの凄く冷静に観察している目線が、ウシジマくんの奇妙な怖さに繋がっているのかと考えさせられます。

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怖すぎる闇金取材

主人公のウシジマくんが闇金業者なわけですから、当然ながら闇金業者への取材もしています。

「カネを借りたら、債務者は当然、早く元金を返したいものです。ところが、闇金業者は暴利の利息で食っている。それで、変な理屈をつけて元金を受け取らないんです。

たとえば、債務者が1秒でも待ち合わせに遅れたとします。すると、闇金業者は、そうした本当に些細なところに全力で難癖をつけるわけです。

"お前は人間としてダメだ。 どうしようもない弱いヤツだ"って、本当にしつこく何時間も言い続ける。そして最後に"だから元金は受け取らない。 利息だけ払えばいい。オレの言うことを聞け"とやる。ある種の洗脳ですよね。

理屈も何もないんですが、債務者は元金を返済できるのに、利息だけ払って帰ることになるわけです」

闇金業者の手腕とは、いかに元金を回収するかではなく、いかに借り手との人間関係を作り、元金を返済させないかというところにあると、真鍋氏は言う。

「その結果、元金は5万円だったのに、実際に支払った額は800万円以上、なんてことはザラですね。それで、業者がたまに債務者に与えることもある。高いワインを送ったりするんです。おカネ借りている人が、ワインもらってうれしいかと言えば、うれしいはずがないんですよ。

でも、そうやって感謝させる道を作って"これだけやってんだから仲良くして、もっと関係を深めよう。俺のこと好きだろ?"って感じなんです。基本的に債務者は心が弱いから、関係を続けることになってしまう。闇金業者たちは、人間をすごくよく見ている。頭いいですよ、やっぱり」

ただし、その巧みな取り立ての背後には、常に暴力が控えている。

「喫茶店など公衆の面前で、債務者をいきなり平手打ちするんです。それって、ものすごく恐いでしょう? 今は、昔に比べれば控えているようですが、足を持ってビルの屋上から逆さ吊りにしたこともある、と言ってましたね」

取材対象者には当然、強面(こわもて)の人間もいる。緊張する場面もあった。

「"アイツは人を殺してる"という噂があった人に、取材したときですね。やっぱり面と向かうと、何をするかわからない、という緊張感がありました。人間ではなく、非常に動物っぽい、という印象です。それで、噂のことを聞いたんですよ。"本当なんでしょうか"って。

そうしたら"ああ、車で轢いたんだよ"って、さらっと言ってました。"だって、ぶん殴ると手が痛いだろ?だから轢いた"って、平然としてましたね」

円速 より引用

下手な怖い話よりよっぽど怖いです。

何が怖いって、人間としての思考回路のタガが完全にズレてしまっている人が、それでも人間として生活している現実がリアルに怖い。

ウシジマくんを読みながら、「闇金業者ってこんな感じなんだ。漫画だし脚色はあるだろうけど、やっぱり怖いなぁ。」と思っていましたが、脚色も何もない、ガチでした。話を聞いていると、むしろ分かりやすく多少ポップに描いてくれているのではないかと思うほど。

「闇金ウシジマくん」を読んでいる時、私はホラー映画の名手、イーライ・ロスのこの言葉を思い出すのでした。

「僕は人を怖がらせるのが好きだ。物事が悪い方向に向かうと、人々は物事を制御できなくなったと感じる。だからそれよりも怖いと思えるはけ口や場所が必要になるんだ。これはホラー映画以上に最適なものはないよね!」

イーライ・ロス