いつもより少し月が大きく見えると「今日ってスーパームーンなんじゃない!?」と思ってしまったりすることってありませんか?

実は、スーパームーンと月が大きく見える現象はあまり関係がありません。「スーパームーンだ!」と話題になってはいても、専門家曰く、肉眼ではそんなに分からないそうです。

実は、いつもより月が大きく見えるあの現象は「月の錯視」と呼ばれる目の錯覚なのです。

なんだ、残念。と思うかもしれませんが、スーパームーンの凄さは大きさよりもその明るさ。この錯覚を知ってうまく利用すれば、明るく大きな美しい月の写真が撮れるようになるはず。

ちなみに、2016年のスーパームーンは11月16日。2017年は見れず、次は2018年のお正月です。

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スーパームーンとは

月は地球から約40万6000km~35万7000Kmの距離で近付いたり離れたりを繰り返しています。

40万6000Kmを0%として、地球に90%以上接近した新月・満月をスーパームーンと呼びます。

「スーパームーン」というこの言葉は、占星術師のリチャード・ノル氏が定義したものですが、なぜ90%なのかについては言及されていません。

一番遠い月から最大30%明るく、14%大きい月になると言われていますが、大きさの違いは肉眼で確認できるほどではありません。

しかし、スーパームーンの日じゃないのに月がとても大きく見える時がありますよね。

あれは実は目の錯覚が起こす現象なのです。

目の錯覚で大きく見える月

地平線を上る月は大きく、頭上に浮かぶ月は小さく見える。この錯覚の現象は「月の錯視」と呼ばれ、かなり昔から研究されています。

月だけでなく太陽や天体でも起こるので「天体錯視」とも呼ばれます。

紀元前の哲学者アリストテレスをはじめ、現代に至るまでたくさんの学者がこの問題に取り組んできましたが、未だに完全には解明されていません。

同じ距離であるはずの天体が目視で確認できるほど大きさが違って見えるこの現象は、一般的な常識を持っている人にはあり得ないことで、これまでたくさんの仮説が語られてきました。

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なぜ大きく錯覚するのか

現在では、様々な要素が複合的に絡み合ってこの現象を起こしているというところに落ち着いています。

大雑把には「月の錯視」には“月との膨大な距離が関係している”ということ、“人間の目は背景に依存してものの大きさを見ている”ということが分かっています。

一番有力な説

中でも教科書などにも載っている一番有力な説としてロックとカウフマンによる地勢説があります。

簡単に言うと、距離感が大きさの知覚に影響を及ぼしているという説です。

1960年ごろ,ロックとカウフマン(Rock, I. & Kaufman, L.)は,ハーフミラーを使って,無限遠にあるように見える月の像を作り,それをさまざまな風景と重ね合わせて,被験者に観察させる実験を行いました。

一連の実験で彼らが得た結果は,月までの見かけの距離が大きさの錯視を生み出しているというものでした。

2つの対象が同じ長さや大きさで眼の網膜に映っていても,一方の対象が他方の対象の2倍の距離にあれば,その実際の長さは他方の対象の2倍のはずです(いわゆる大きさの恒常性です)。

月の場合にも,網膜像の大きさは同じですが,真上の月に比べると,地平の月のほうが見かけの距離が遠いので,脳は地平の月のほうを相対的に大きいように見せるのだ,というわけです。

日本心理学会 より引用

しかし、真っ暗な中でも大きく見えたり、観測者に距離を推定させると近く見えるなど、地勢説では説明できない現象もあり、月の錯視を完全に解決するまでには至りませんでした。

このように、一番有力とされる説をもってしても解決できない問題が残しており、これまでの研究を総合的に考えた結果、様々な要素が複合的に絡み合ってこの現象を起こしているという説が現状で最も有力とされているというわけです。

これまでの研究の軌跡

それでは、これまでの研究の軌跡を簡単に追いかけてみましょう。

空気層の屈折説

哲学者アリストテレスが提唱し、プトレマイオスが支持したのが、“地平線の近くは空気層が厚くなっており、それによって光の屈折が起こり月が大きく見える”という説。

しかし、現代の科学では「屈折は光の進行方向を変えるだけで、大きさは変えない」ということが証明されており、この説は否定されています。

瞳孔拡大説

地平線の近くでは、目に入る光が弱まるため、目の瞳孔が大きくなって錯覚が起こっているという説。

しかし、山や建物などの大きさは変わらないため、この説も否定されています。

水晶体扁平(へんぺい)説

空を見上げると、眼球の水晶体が薄くなるために、月が小さく見えるという説。

視線説

視線を上げて見ると対象物が小さく見えるため、地平線の月が相対的に大きく感じられるという説。

ポンゾ錯視説

ホンゾ錯視
有名なポンゾ錯視をもとにした説で、「人間は物体の大きさを背景に依存して判断している」というものです。

地平線近くの月は、無意識のうちに建物や山々などと比較されるため、脳が実際よりも大きいと思わせるという説で、地勢説と並んで最も有力な説のひとつと言われています。

地勢説

月の錯視 地勢説

この項の冒頭で解説した、ロックとカウフマンの説です。

独自に考案した実験装置によって、対象物までの距離感が錯視量(月の大きさの見え方の違い)に影響を与えていることを明らかにしました。

しかし、有力な説だけに反証もおおくなされ、この説でも「月の錯視」を完全に説明することはできませんでした。

色々絡みすぎ説

これらの研究の成果を総合的に考察し、ロスとフラグは、「色々絡みすぎてわけわかんなくなっている」と考えました。

しかし、どんな条件がどのように絡んでいるのかについては、未だに解明されていません。

錯覚は心理学的な要素が大きい

目の錯覚は、科学よりも心理学が深くかかわっている現象です。

人の心理は十人十色。心理学は明確に数値化できるものではないため、科学と違って万人に100%の結果を証明することが難しい分野です。

自分が見ている月が隣の人が見ている月と同じ大きさだとは限らないし、1時間後の自分が同じ大きさの月を見ているとは限らないのです。

例えば、大きさの近くには感情の機能も深くかかわっているという説があります。感情機能が豊かな初心者、女性、芸術家肌の人は、通常の二倍以上の錯視率を持つされています。

しかし、一体どこまでが初心者で、どこまでが芸術家肌の人なのか、明確に線引きすることは不可能です。

あとがき

私たちが認識できる世界がいかに主観に頼ったもので、不安定なものなのかが良く分かる話でした。

スーパームーンが「肉眼で見てもその差がほとんど分からない」と言われているのは、月の錯視による差の方が遥かに大きいからなんでしょう。

地勢説の距離感やホンゾ錯視の対比物を利用すれば、より大きく綺麗な写真が撮れそうです。スーパームーンだけでなく、花火や山なんかを収める時にも使えそうです。

風景や天体などの何か大きなものの写真を撮る時は、こうした目の錯覚を利用すると、周りをあっと言わせる写真を撮ることができるかもしれませんね。